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顎変形症は遺伝?生活習慣?|上顎前突・下顎前突・下顎後退・顔面非対称を 顎変形症外来専門医師が解説
2026年1月23日「顎の形って、生まれつきなんですか?
それとも生活習慣のせいでしょうか?」
歯科や矯正の現場で、もっとも多い質問のひとつです。
実はこの疑問、医学的にもとても重要です。
なぜなら
**「遺伝で決まる部分」と「生活で変わる部分」**を分けて考えることで、
治療の選択肢やゴールがはっきりするからです。
この記事では、代表的な4つの顎変形症を
**「遺伝 × 環境(生活習慣)」**という視点から、
できるだけわかりやすく解説します。
顎変形症の4つのタイプ
顎の骨格は、主に次の4つのパターンに分けられます。
- 上顎前突(いわゆる出っ歯)
- 下顎前突(受け口)
- 下顎後退(あごが小さい・引っ込む)
- 顔面非対称(左右差が目立つ)
ここでいう「遺伝」とは、
**ひとつの遺伝子で決まるものではなく、複数の遺伝要因が重なった“体質”**のことです。
その土台の上に、呼吸・舌・筋肉・姿勢・癖といった生活習慣が影響します。
① 下顎前突(受け口)|遺伝の影響が最も強い
結論から言うと、
受け口は顎変形症の中で最も遺伝の影響が強いタイプです。
- 家族内で似やすい
- 一卵性双生児で高い一致率
- 世界中で同じ研究結果が出ている
これらから、医学的にもほぼ共通認識となっています。
なぜ遺伝の影響が強いの?
下顎の成長は
骨・軟骨・筋肉・成長ホルモンが複雑に関係しています。
遺伝的に「下顎が前に成長しやすい体質」の人が一定数存在します。
生活習慣は関係ない?
無関係ではありません。
舌の癖・口呼吸・食いしばりなどがあると、
もともとの下顎の前方成長が強調されることがあります。
ただし受け口は
「生活習慣だけで起こる」
よりも
「遺伝の土台に生活が上乗せされる」
と考えるのが現実的です。
② 下顎後退(あごが小さい)|遺伝と生活が半々
下顎後退は
生まれつきの要素+後天的な変化が組み合わさって起こることが多いタイプです。
生まれつきの影響
- 下顎の成長が弱めな体質
- あごの成長スパートが小さい
これだけでも、軽度の下顎後退は起こります。
後天的に悪化する大きな原因:顎関節の変化
特に重要なのが
下顎頭(顎関節の骨)の吸収です。
- 食いしばり
- 姿勢の悪さ
- 顎関節への負担
- 思春期〜若年女性に多い特発性の吸収
これらによって、
**「もともと小さい下顎が、さらに後退する」**ケースが少なくありません。
👉 下顎後退は
二段階(生まれつき+後天的変化)で進む
と考えると理解しやすいです。
③ 上顎前突(出っ歯)|遺伝+生活で目立ちやすい
出っ歯は「歯並びの問題」と思われがちですが、
実は中顔面(鼻〜上顎)の骨格自体が遺伝に左右されやすいタイプです。
生まれつきの要素
- 上顎が前に出やすい骨格
- 中顔面の成長バランス
これらは妊娠初期から決まる部分が多く、
完全に後天的に変えることは難しいです。
生活習慣で強調される要素
- 口呼吸
- 舌の位置が低い
- 唇が閉じにくい
- 柔らかい食事
これらがあると、
**歯が前に倒れて「より出っ歯に見える」**ようになります。
④ 顔面非対称|下顎頭の左右差がカギ
顔の左右差で最も多い原因は、
左右の下顎頭の成長差です。
主な2つのパターン
① 下顎頭が小さくなるタイプ(吸収)
- 顔が片側に寄る
- 思春期女性に多い
② 下顎頭が大きくなり続けるタイプ(過形成)
- 片側の顎だけ成長
- 成人後も進行することがある
軽い左右差は生活習慣でも起こりますが、
中等度以上の非対称は顎関節の成長異常が原因であることが多いです。
まとめ|顎の形は「遺伝 × 生活」で決まる
顎変形症は
生まれつきの骨格の土台に
生活習慣が積み重なって完成します。
- 遺伝の影響が強い部分 → 矯正・外科治療
- 生活で悪化する部分 → 呼吸・姿勢・舌・筋機能訓練
つまり現代の治療は、
「骨格」と「生活」の両方にアプローチする時代です。
「自分の場合はどこまで治るのか?」
それを知るためには、
遺伝と生活のバランスを正しく見極めることが第一歩になります。