• 歯ぎしりの原因と治療 ─ ボトックスは有効?

    2025年9月29日

    顎関節専門医、歯ぎしり(睡眠時ブラキシズム)研究者が解説

    歯ぎしりの原因とは?

    歯ぎしり(睡眠時ブラキシズム)は単なる「クセ」ではありません。

    • ストレスや自律神経の影響
    • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)との関連(合併率33〜54%)
    • GERD(逆流性食道炎)や顎関節症との関係

    このように、歯ぎしりは身体の防御反応として起きる場合もあります。

    歯ぎしりの治療法と特徴

    1. マウスピース(オーラルアプライアンス)

    歯や顎関節を守るために広く用いられています。

    • ハードスプリント:安定性は高いが、長期使用で噛み合わせに変化する可能性
    • ソフトスプリント:装着感は良いが、筋活動が増えることもある
    • 新型(デジタル・センサー搭載型):効果はまだ不明

    ➡ Cochraneレビューでは「歯質保護」には有効ですが、歯ぎしりそのものを減らす根拠は不十分とされています。

    2. ボトックス注射(ボツリヌス毒素注射)

    咬筋や側頭筋に注射して筋活動を抑える治療法です。

    • 効果:痛みや噛む力の軽減
    • 注意点
      • 顔の左右非対称や表情の変化
      • 嚥下への影響(飲み込みづらさ、特に高齢者)
      • 筋萎縮・骨代謝への影響
      • 歯ぎしりイベント自体の減少は限定的

    ➡ エビデンスは「中程度」で、今後の研究が必要です。

    3. その他のアプローチ

    抗不安薬、理学療法、催眠療法などがありますが、現時点では補助的な位置づけです。

    歯ぎしりは治療すべき?それとも見守るべき?

    最新の研究では、歯ぎしりは「悪者」とは限らず、気道を守る役割を果たす可能性も指摘されています。

    治療が必要かどうかは、以下の点を考慮して判断します。

    • 歯の摩耗や顎の痛みがあるか
    • 睡眠の質が低下していないか
    • 他の疾患との関連があるか

    まとめ

    歯ぎしりの原因は複雑で、治療法にもそれぞれメリットとリスクがあります。
    マウスピースは歯を守る役割があり、ボトックスは筋活動を抑える方法として注目されていますが、長期的な影響も考慮が必要です。

    歯ぎしりや顎の痛み、睡眠の質でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。