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顎関節症の検査|レントゲン・CT・MRIで何がわかる?専門医が解説
2026年9月18日「顎関節症はレントゲンでわかる?」
「CTとMRIは何が違う?」
「顎がカクカク鳴るならMRIを撮ったほうがいい?」
「口が開かない原因は画像を撮ればわかる?」
顎関節症の診療では、必要に応じてレントゲン(X線)、CT、MRIなどの画像検査を行います。
しかし、最初に知っていただきたいのは、
顎関節症は、画像を撮るだけで診断する病気ではない
ということです。
顎関節症には、顎関節だけでなく咀嚼筋の痛みや関節円板の問題など、さまざまな病態があります。
そのため当院では、
問診 → 顎関節・咀嚼筋・顎運動の診察 → 必要に応じて画像検査
という順序を大切にしています。
今回は、顎関節症の検査と、レントゲン・CT・MRIでそれぞれ何がわかるのかを解説します。
顎関節症の検査は「画像」から始まるわけではありません
顎が痛い、口が開かない、カクカク音がする。
このような症状があると、
「まずMRIを撮れば原因がわかるのでは?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、顎関節症の診断で最初に重要なのは問診と診察です。
例えば、
・いつから症状があるのか
・どこが痛いのか
・口を開けると痛いのか
・食事で痛むのか
・口がどのくらい開くのか
・顎が引っかかることがあるか
・以前から関節音があったか
・突然口が開かなくなったか
・実際の食事で困っていることはないかなどを確認します。
そのうえで顎関節、咀嚼筋、顎運動などを診察し、
「何を確認するために画像が必要なのか」
を考えます。
顎関節症では何を診察する?
顎関節症の診察では、単に「口が何mm開くか」だけを見るわけではありません。
必要に応じて、
・開口量
・顎を開け閉めしたときの動き
・左右・前方への顎運動
・顎関節部の痛み
・咬筋や側頭筋などの痛み
・普段感じている痛みが診察で再現されるか
・クリック音やクレピタスなどの関節音
・ロッキングの有無
・咬合
・咀嚼などの口腔顔面機能を評価します。
顎関節症には、咀嚼筋が主な痛みの原因になっているものもあります。
そのため、
「顎が痛いから顎関節の画像を撮ればすべてわかる」
わけではありません。
レントゲンでは何がわかる?
一般的な歯科医院で行われることが多いのが、X線を使ったレントゲン検査です。
パノラマX線写真では、上下の顎骨や歯、下顎頭などを広く確認することができます。
顎関節症の診療では、
・下顎頭の大きな形態変化
・左右差
・顎骨の状態
・歯やその周囲の病変
・顎関節症以外の病気の可能性などを確認する手がかりになります。
特に顎の痛みでは、歯や歯周組織などが原因となっていることもあるため、顎関節だけを見るのではなく口腔・顎顔面領域全体を見ることも重要です。
レントゲンだけではわからないこともあります
レントゲンは非常に有用な検査ですが、万能ではありません。
例えば、
関節円板の位置や形態を通常のレントゲンで直接確認することはできません。
また、骨の細かな変化を詳しく確認したい場合には、CTやCBCT(歯科用コーンビームCT)が適していることがあります。
つまり、
レントゲンで異常がない=顎関節に問題がない
とは限りません。
CTでは何がわかる?
CTはX線を利用して、顎関節を断層画像として詳しく観察する検査です。
特に骨の評価に優れています。
例えば、
・下顎頭の形態
・骨皮質の状態
・骨の変形
・骨びらん
・骨棘
・骨硬化
・骨折などの外傷性変化を詳しく確認する場合に有用です。
顎関節の骨性変化が疑われる場合や、外傷、顎顔面形態をより詳しく確認する必要がある場合などに検討します。
CTを撮れば関節円板もわかる?
通常のCTやCBCTは、骨を見ることには優れていますが、関節円板などの軟組織を詳しく評価する検査ではありません。
関節円板を詳しく調べたい場合には、MRIが適しています。
したがって、
CTとMRIは「どちらが優れているか」ではなく、見たいものが違う
と考えるとわかりやすいでしょう。
骨を詳しく見る → CT
関節円板などの軟組織を見る → MRI
というのが基本的な違いです。
MRIでは何がわかる?
MRI(磁気共鳴画像)は、磁場などを利用して身体の内部を画像化する検査です。
顎関節では特に、
関節円板や関節周囲の軟組織
を評価するために有用です。
例えば、
・関節円板の位置
・関節円板の形態
・開閉口に伴う関節円板の動態
・関節腔内の液体貯留などを評価する際に用いられます。
「顎がカクカク鳴る」とMRIで何が見える?
顎を開閉したときに、
「カクッ」
「パキッ」
と音がする場合があります。
クリック音の一部には、関節円板の位置や動きが関係していることがあります。
MRIでは、関節円板と下顎頭との位置関係を確認することができます。
例えば、口を閉じた状態では関節円板が前方に位置していても、口を開ける過程で正常に近い位置関係に戻る場合があります。
これは復位性関節円板前方転位などでみられる所見です。
一方、開口しても関節円板が復位せず、開口障害を伴うことがあります。
ただし、
「カクカク音がする=必ず関節円板がずれている」
とは、音だけでは診断できません。
診察所見と、必要に応じた画像所見を組み合わせて判断します。
口が開かない場合はMRIが必要?
「突然口が開かなくなった」
「以前はカクカク鳴っていたのに、音がしなくなって口が開きにくくなった」
という場合には、関節円板の転位などを考えることがあります。
このようなケースで、診断や治療方針を決めるために関節円板の状態を確認する必要があれば、MRIが有用です。
しかし、
口が開かない=必ずMRI
ではありません。
開口障害は、関節円板だけでなく、
咀嚼筋の痛み
炎症
感染
外傷
その他の口腔外科疾患などでも生じる可能性があります。
まず診察によって原因を絞り込み、必要な場合にMRIなどを選択します。
MRIで異常があれば治療が必要?
ここも非常に重要です。
MRIで関節円板の位置に変化が見つかったからといって、必ず治療が必要とは限りません。
画像上の変化と患者さんの症状は、必ずしも一致するわけではないからです。
例えば、関節円板の位置に変化があっても、
痛みがない
十分に口が開く
ロッキングがない
普通に食事ができるという方もいます。
顎関節症では、
「画像を正常に戻すこと」そのものが治療目的ではありません。
画像所見だけではなく、
痛み
顎運動
開口量
咀嚼などの機能
日常生活への影響を合わせて判断することが重要です。
CTで骨の変形があったら重症?
CTで下顎頭の形態変化が見つかることがあります。
しかし、
「骨が変形している=必ず強い症状がある」
とは限りません。
画像上の骨性変化があっても、痛みがほとんどない方もいます。
反対に、画像上で大きな変化がなくても強い疼痛がある方もいます。
そのため、
画像の見た目だけで「重症」「軽症」を決めることはできません。
患者さんが実際にどのような症状・機能障害を抱えているのかを見る必要があります。
画像検査をたくさん受けたほうが正確?
必ずしもそうではありません。
検査で重要なのは、
「たくさん検査すること」ではなく、「診断や治療方針に必要な検査を選択すること」
です。
例えば、咀嚼筋痛が中心で、問診と診察から病態が十分に評価できる患者さんに、全員CTやMRIを行う必要があるとは限りません。
一方、
・骨性変化が疑われる
・外傷がある
・強い開口障害やロッキングがある
・関節円板の状態を確認する必要がある
・症状と診察所見が一致しない
・通常とは異なる病態を疑うといった場合には、画像検査が診断に重要な情報を与えてくれることがあります。
CTの放射線被ばくは?
CTやレントゲンはX線を使用するため、放射線被ばくがあります。
そのため、
必要性を考えたうえで撮影する
ことが基本です。
一方、MRIはX線を使用しないため、CTやレントゲンのような電離放射線による被ばくはありません。
ただしMRIにも、検査時間、騒音、閉所での撮影、体内の金属や医療機器などについて注意が必要な場合があります。
検査にはそれぞれ長所と限界があるため、目的に応じて選択します。
レントゲン・CT・MRIの違いをまとめると
レントゲン(X線)
主にわかること:
歯・顎骨・下顎頭の大きな形態変化など特徴:
顎顔面全体を確認する基本的な画像検査として使用されます。CT・CBCT
主にわかること:
顎関節の骨の形態や細かな骨性変化特徴:
下顎頭などの骨を三次元的・断層的に詳しく評価することに適しています。MRI
主にわかること:
関節円板、軟組織、関節腔内の状態など特徴:
関節円板の位置や形態など、X線・CTでは十分に評価できない軟組織の観察に適しています。「MRIを撮れば顎関節症の原因が全部わかる」は間違いです
MRIは非常に有用な検査ですが、
MRI=顎関節症のすべてがわかる検査
ではありません。
例えば、咀嚼筋の痛みを中心とした顎関節症では、画像よりも問診や触診、顎運動時の痛みの再現などが診断上重要になる場合があります。
また顎関節症以外にも、歯の病気、頭痛疾患、神経障害性疼痛、耳鼻咽喉科領域の疾患などが顎・顔面の痛みとして感じられることがあります。
つまり、
画像を読む力だけではなく、画像を撮る必要があるかを判断する力
も重要です。
当院では「画像」ではなく「患者さん」を診ます
東京・目黒区のノザワ歯科では、日本顎関節学会専門医・口腔外科医が顎関節症の診療を行っています。
院長は顎関節症・顎変形症を専門領域とし、咬合学、顎運動、口腔顔面機能について研究してきました。
現在も東京都立大塚病院および亀田病院で、顎変形症・顎関節症の専門外来を担当しています。
当院では、
顎関節
咀嚼筋
開口量
顎運動
咬合
顎顔面形態
咀嚼などの口腔顔面機能を必要に応じて評価します。
そのうえで、
「骨を詳しく見る必要があるのか」
「関節円板を確認する必要があるのか」
「そもそも画像検査が必要なのか」を判断します。
CTやMRIは、撮影すること自体が目的ではありません。
診断や治療方針を決めるために必要な情報が得られるか
という視点で検査を選択します。
まとめ|大切なのは「何を調べるための検査か」
顎関節症の画像検査には、レントゲン、CT、MRIなどがあります。
簡単に整理すると、
レントゲン → 歯・顎骨・顎関節を広く確認する
CT → 顎関節の骨を詳しく見る
MRI → 関節円板などの軟組織を見る
という違いがあります。
しかし、最も重要なのは、
「とりあえず画像を撮る」ことではありません。
まず、
どこが痛いのか。
なぜ口が開かないのか。
顎はどのように動いているのか。
咀嚼などの機能にどのような問題があるのか。を診察する。
そして、診断や治療方針を決めるために必要であれば、適切な画像検査を選択する。
検査をたくさん行うのではなく、必要な検査を選ぶ。
これが顎関節症の診断では重要です。
よくある質問
Q. 顎関節症はレントゲンだけで診断できますか?
レントゲンだけで顎関節症のすべてを診断することはできません。問診や顎関節・咀嚼筋・顎運動などの診察が基本となり、必要に応じて画像検査を組み合わせます。
Q. 顎がカクカク鳴るならMRIを撮ったほうがいいですか?
痛みや開口障害のない関節音だけであれば、必ずしもMRIが必要とは限りません。症状や診察所見をもとに必要性を判断します。
Q. CTとMRIはどちらが詳しいですか?
見る対象が異なります。骨を詳しく評価するにはCT、関節円板などの軟組織を評価するにはMRIが適しています。
Q. MRIで関節円板がずれていたら治療が必要ですか?
画像上の関節円板の位置だけで治療の必要性は決まりません。痛み、開口障害、ロッキング、咀嚼機能などを総合的に評価します。
Q. CTやMRIは全員受けたほうがいいですか?
いいえ。すべての顎関節症患者さんにCTやMRIが必要なわけではありません。診断や治療方針に必要な場合に選択します。
参考文献・参考資料
・National Institute of Dental and Craniofacial Research(NIDCR)「Temporomandibular Disorders(TMDs)」
・Mallya SM, Ahmad M, Cohen JR, et al. Recommendations for Imaging of the Temporomandibular Joint. Position Statement from the American Academy of Oral and Maxillofacial Radiology and the American Academy of Orofacial Pain. J Oral Facial Pain Headache. 2023;37(1):7-15.
・一般社団法人 日本顎関節学会「顎関節症治療の指針」
・Schiffman E, Ohrbach R, Truelove E, et al. Diagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders(DC/TMD). J Oral Facial Pain Headache. 2014;28(1):6-27.
※本記事は一般的な医学・歯科医学情報の提供を目的としており、個々の患者さんの診断・治療を行うものではありません。顎の痛みや開口障害などがある場合には、歯科医師・医師による診察を受けてください。